第10章 つかの間の幸せと絶望は死神とともに
卍 卍 卍
ようやく泣き止んだリツカは泣き腫らした目を冷やしながら、机を挟んだ目の前にいる杏花に視線を向ける。
「改めて久しぶりだね。お姉ちゃん」
『ひ、久しぶりだね.....杏花』
居心地が悪そうにリツカは視線を泳がせながら答える。
「元気にしてた?」
『え、まぁ.....そこそこには.....』
「....」
『....』
気まずい空気が辺りに立ちこめ、2人はソワソワと手を動かす。
それを目の前で繰り広げられている東堂は焦れったそうに苛立ちを隠せないと言わんばかりの表情を浮かべながら、お茶を運ぶ。
『あ、えっと....』
「はい!」
『その....いい天気だね』
「残念ながら今日は曇りですよ。」
『う"っ....』
「折角の再会だと言うのになんで天気の話になるんですか!積もる話があるでしょう!」
『だって.....』
「だってじゃありません!どうせ緊張で何を話したらいいか分からないとでも言うつもりですよね?」
『.....』
「はぁ....全くいつまで経っても貴女という人は....」
東堂は呆れたようにため息を着くと、出口へと歩き出す。
『ちょっ、東堂!どこ行くの?』
「車を回してきます。」
『車?』
「ええ。そうですよ。今日は2人でお食事に行く約束をしていたじゃないですか。」
まさか忘れたとは言いませんよね?と黒い笑みを浮かべた東堂がん?と首を傾げる。
『そ、ソウダッタネ…』
まさか約束したのが"別の"私だなんて言える訳もなくリツカと杏花は東堂が回してきてくれた車を借りて2人でレストランへと向かった。