第10章 つかの間の幸せと絶望は死神とともに
『杏花....』
「久しぶりだね。お兄....ううん。お姉ちゃん」
目の前に12年前と変わらずの可愛らしい笑みを浮かべた杏花を前にリツカは大きく目を見開く。
『っ.....あれ.....?』
「相変わらず泣き虫だね。」
『〜〜〜っ!!』
あの頃と変わらない目をした杏花を見て、タンザナイトの瞳からハラハラと枯れたと思っていた涙がこぼれ落ちる。
「泣かないでお姉ちゃん。私はここに居るよ。」
ロッキングチェアから降りた杏花が泣き崩れたリツカを優しく抱きしめる。
あの時は冷たかった手が今は暖かくて....
それが嬉しくて
リツカは12年分の悲しみを解放するように気づいたら声を上げて泣いた。