第10章 つかの間の幸せと絶望は死神とともに
卍 卍 卍
ナオトから教えて貰った見覚えのある住所へと向かっていると、少しずつ1ヶ月前のあったはずの未来の記憶が鮮明に思い出される。
【リツカ様....杏花様がっ!!】
無機質なスマホから聞こえる東堂の声
あの時は何も出来なかった。
ただ、与えられた現実を受け入れることしか許されなかった。
だけど今は違う。
今は杏花に会える。
杏花が生きてるんだ!!
ドキドキと痛いくらい鳴る鼓動を抑えながらリツカはしっかりとした足取りで12年前家と呼んでいた場所へと立つ。
『良かった。住所変わってなくて。』
12年前と変わらず煌びやかな豪邸を前にゴクリと固唾を飲むと震える手で、インターホンを押そうと手伸ばす。
しかしその瞬間
ナオトと自身の言葉が頭の片隅を過ぎった。
【12年も経ってるんですよ。もう立派な女性です。】
【久しぶりに姉妹水入らずで話したいし。】
"姉妹水入らず"その言葉にリツカは大きく目を見開く。
『(姉妹水入らず?は?私、何勘違いしてるの?)』
12年前私はあの日.....
──────【あなたなんて私の兄じゃない】
杏花に拒絶された。
私はあの子に辛い選択をさせた。
そんな姉を誰が歓迎するだろうか....
否、歓迎などされないだろう。
それが普通なのだ。
人生を危うく狂わされそうになった原因の姉になど会いたくないはずだ。
『〜〜っ!!』
ガシャンッ!!
自分対する怒りと会いたいけど会えない悔しさにリツカは門を思いっきり殴りつけ、崩れ落ちる。
『12年.....12年間ずっとほったらかし、結婚式には参加しない.....実家にも帰らず、連絡も取らない....』
何やってんだ。私。
あれだけ必死に未来を変えるために頑張ったのに結局大切な所では逃げてバカみたいだ....
『こんな私じゃ....杏花になんて会えないよ....』
杏花は生きてる。
それで充分じゃん。
あとはマイキーがどうしてるか知るだけ....
タイムリープを始めた理由だってあの子とマイキーの幸せを願っての事だった。
これ以上望んじゃダメだ。
これ以上望んだら─────