第10章 つかの間の幸せと絶望は死神とともに
『....えーと....ここだよね?』
スマホに記してあった場所へと向かうと赤レンガのオシャレな美容院で働く見慣れた赤髪のリーゼントが遠目のガラス越しから見えた。
『え.....?』
まさか!!そんなはずはない!と思わずリツカは走る。
するとドンッ!と勢いよく誰かと肩がぶつかった。
「いってて」
『あ、すみません。って!タケミチ!?』
「へ!?リッちゃん!?」
尻もちを着いた人物に視線を向けると、ついさっき自分とタイムリープしていたであろう花垣武道の姿があった。
「何でここに?」
『いや、スケジュール通知にここに行けって.....もしかしてタケミチも?』
「うん。と、とりあえず行ってみようぜ。」
『うん。』
タケミチに連れられ、赤レンガの美容院に向かうとやはり見間違いではなかった。
中学の時と変わらず赤髪のリーゼント、そして少し大人っぽい顔立ちになったアッ君の姿がそこにはあった。
「『アッ君....』」
2人は目頭が熱くなる感覚を覚えた。
自然と大きな瞳からポロポロと涙がこぼれおち、ついにはタケミチがガラスに張り付き、大きな声で彼の名を呼んだ。
「アッ君!!!」
「?何やってんだよ...タケミチ。ほら、入れよ。」
その声に気づいたアッ君はこちらを見て苦笑いを浮かべると扉を開けて2人を店に招き入れる。
「2人とも早かったな。仕事は?」
「抜けてきた....」
『お、同じく....』
「あはは!クビになんぞ。てかアオバもかよ。」
『えへへ....』
「アッ君もしかして美容師になったの?」
「あ?まだ卵な?アシスタントやってるって言ったじゃん。」
「う、うん。」
「毎日毎日こき使われてるよ。雑用。」
『あはは....』
「あ!アオバっ!コノヤロウ笑ったなぁ!?」
『ごめんごめん(懐かしいな.....よくこうやって言い合いしてたっけ....)』
やっと泣き止んだはずの瞳にまた涙の膜が張る。