第10章 つかの間の幸せと絶望は死神とともに
卍 卍 卍
警視庁を飛び出したリツカは早足で家路に着きながら、今の状況を確認するためにスマホを必死に嬲る。
Prrrrr.....Prrrrr....Prrrr....
【おかけになった電話番号はおでになりません】
『(どれだけ連絡してもナオトもタケミチも出てくれない!なんで!?)』
何度コールしても呼び出されることの無い電話番号を前に焦りを覚えていると、スマホの通知がピロン!となった。
『こんな時に何!?』
【美容院 今日20:00】
『スケジュール通知?』
画面に現れた見覚えのない通知に訝しみながらもタップして中を確認する。
【20:00に美容院に行く。あの子と外食に行く前に彼が髪を切ってくれるそうだ。すごく楽しみ。住所は────】
『あの子?外食?それに美容院って....何コレ』
今はそんなことしている暇はない。
閉じようと指を動かそうとした時、
文章に違和感を感じ、ピタッと指の動きが止まる。
───"彼"が髪を切ってくれるそうだ。
『(彼?.....誰のことだ。)』
美容院.....彼......混沌とする思考の中、存在しないはずの記憶が脳裏に蘇る。
【アオバ!俺さ美容師になりたいんだ!だからお前がこっちに帰ってきたら....俺の!2番目の客になってくれよ!】
そう言った遠い日の彼の姿を思い出したリツカは目を見開き、急いでとある場所へと向かった。