第9章 8・3抗争
卍 卍 卍
「わぁ!すっごく綺麗だね!」
『そうだね。』
パチャパチャと水を跳ねさせながら笑う杏花を前にリツカは悲しそうな笑みを浮かべる。
きっとコレが私にとって最後の思い出になるだろう。
なら、最後くらい大好きな場所と人に囲まれてこのミッションを終わらせたい。
『杏花。』
「?何?お兄ちゃん!」
『ちょっとこっちに来てくれる?』
「ん?うん!」
リツカに名前を呼ばれた杏花は不思議そうな表情を浮かべながら、波打ち際からリツカの元へと駆け寄る。
『これを....』
リツカはポケットから取り出したネックレスを杏花に手渡した。
「わぁ。綺麗な石!」
ネックレスにはしずく型の紫の石がぶら下がっていた。
『これはね。アメジストって言うんだ。魔除の効果があってオレの代わりに杏花を守ってくれる物だよ。』
「へぇ〜」
『お兄ちゃんからのプレゼント。』
「わぁ〜!お兄ちゃんありがとう!お兄ちゃんの目と似てるね!私この色大好き!」
嬉しそうな杏花に対し、リツカは悲しそうに頷くと目を瞑った。
これで最後だ...
思い出作りが終わったら私はもうみんなとは会えない。
でも、その思い出があるだけで私は前に進める....
『杏花....』
「ん?」
『この先どんな辛いことがあっても....お兄ちゃんは杏花の味方だよ。何があってもオレが絶対守ってあげるから....』
「お兄ちゃん?」
あぁもう夏が終わる。
長かった夏の終わりを知らせるようにひぐらしの鳴き声が聞こえる。
ドラケンが死ぬのを阻止した
これでミッションは成功
マイキー
ドラケン
アッ君
杏花.....
本当はもっと一緒にいたい
でも
─────もう帰らないと。
ここにはずっと居られないから
ここは私の居場所じゃない。
私の居場所はあの混沌とした冷たい日々だ。