第9章 8・3抗争
「射的のじゃん」
『うん。マイキーが取ったものだし。マイキーが持ってるべきかなって。』
本当は嘘だ。
私がここにいた証を残したくて
繋がりが欲しくて....
"12年後"(いま)のあなたとは一緒に居られないから...
「....リアがつけてくんない?」
『え、でもピアッサーもニードルもないし』
そういうとマイキーはポケットの中から、ニードルを取り出しリツカに手渡した。
なんで持ってるの.....なんて思いながらニードルを受け取ったリツカはマイキーの左耳の耳朶に手を当てる。
『っ....』
「怖い?」
『怖い.....』
「大丈夫。刺していいよ。」
息を飲みながらリツカはブツンッ!とニードルを指すと、マイキーにピアスをつけた。
『こんな感じでどう?』
「ん。いーね。ありがとう」
マイキーはそう言うとリツカの手にキスをした。
『なっ!』
「これで一生オレがお前のモンだってわかるだろ?」
『何それ』
「言葉通り」
『ふふ。じゃあ私もこれがある限り一生マイキーのモノだね。』
「ん。離す気ねぇから」
嬉しそうな顔でそういうマイキーにリツカは少し悲しそうな笑みを浮かべるとマイキーの胸に抱きついて目を瞑った。
『マイキー....約束守れなくてごめんね。どうか幸せになってね。((ボソッ…』
「?」
『じゃあオレ帰るね.....バイバイ!』
リツカはそういうとマイキーの元を去り、病院を出た。
「お兄ちゃん!」
『杏花。』
聞きなれた声が聞こえ振り返ると、小さな体に少し大きなヴァイオリンのケースを持った杏花が立っていた。
『習い事帰り?』
「うん!」
『そっか。』
「私ね!今日G線上のアリアを弾けたのよ!」
『おお!すごいな!』
誇らしそうにする杏花の頭を優しく撫ぜた。
そして、一瞬に暗い顔をすると無理やり笑みを浮かべながら杏花の手を引いた。
「お兄ちゃん?」
『杏花。海に行こうか。』
「え?こんな時間に?」
『この時間が一番綺麗なんだよ!たまにはいいじゃん。』
「うん!」
フッとリツカは笑うと杏花の手を引いて海へと歩き出した。