第9章 8・3抗争
「アイツはさ、オマエがそばに居るだけいいんだ。オマエが居るだけでアイツは総長としてじゃなくて佐野万次郎として居られる。」
『オレが居るだけで.....』
「だからこれからも一緒にいてやってくれ。」
ドラケンはそういうとベッドから降りて、引き出しから少し古びたタスキを取り出した。
「マイキーがオマエに渡して欲しいだと。」
『これって....!東卍創設時の!』
「ああ。東卍の一員の証としてそしてオレらの希望だっていう証としてオマエに持っていて欲しいって言ってた。オマエは俺らの道標だからな。」
『希望......』
「受け取ってくれるか?」
『オレみたいな奴が持ってていいのかな....すっごく重そう。』
受け取ったタスキを窓越しの晴天に掲げながらリツカは苦笑いをドラケンに向けた。
「タケミっちも同じこと言ってた。」
『え....』
「....アイツにさ、渡したんだ。あの特服を」
『!?それって!』
「ああ。"東卍"立ち上げた時、マイキーが来てた特服だ。マイキーがタケミっちに渡せってよ。まぁ、あれは東卍にとって命みてぇーなシロモンだ。着るか着ねぇかはアイツ次第だけどな。」
『それでもマイキーはタケミチに持っていて欲しかったんだ。』
「ああ。」
『タケミチなら大丈夫だよ!絶対大切にしてくれる。』
「俺もそう信じてる。みんながアイツを認めてる。俺もその1人だ。」
『そっか。』
「改めて受け取ってくれるか?」
『....うん』
「それ大事にしろよ。」
『希望の証....か。これを背負ったら昔みたいにみんなを守ることが出来るかな....』
心ここに在らずと言ったように空虚な目で呟いたリツカを前にドラケンがクスリと笑う。
「アイツに会ってけよ。」
『え?』
「多分屋上で昼寝でもしてっから。」
ドラケンに教えてもらい、屋上へと向かうと夏の真っ盛りだというのに冷たい風がリツカの頬を撫でた。