第9章 8・3抗争
「目ェ真っ赤。もしかして泣いた?」
コクリ。
「そっか。相変わらず泣き虫だな。」
『マイキーが泣かなすぎるだけ.....』
「へぇ〜言うじゃん。」
『.....』
「.....ケンチンが刺された。そう言われた時すっげぇ怖かった。また兄貴みたいに俺を置いていくのかって......また俺は失うのか....そう思ったらすっげぇ怖かった。」
『マイキー.....』
「でも俺は"東卍の総長"だから....."無敵のマイキー"だから完璧じゃ────」
明るい声のはずなのに、ただマイキーは自分の考えを語っているだけなのに.....
それなのに、リツカにとってはそれはまるでマイキーの心のSOSに聞こえて来て、
『我慢しないで。マイキー』
「!」
気がついたらマイキーを優しく抱きしめていた。
『マイキーが辛くて、悲しい時。オレも一緒に泣くから....』
「っ.....」
『オレはマイキーに完璧にあって欲しくない。
辛い時は辛いって、悲しい時は悲しいって言って欲しい。
泣きたい時は泣いたっていいんだよ。
オレがマイキーの泣き声も全部全部覆い隠すから....だから我慢しないで。』
「オマエこういう言う時.....ホント生意気っ」
マイキーはそれだけ言うと自分より小さなリツカの身体を抱きしめ、小さな嗚咽を漏らしながら涙を流す。
「なぁ....約束して。オマエは絶ッ対ェオレの前から居なくならないって。」
『絶対?』
「絶対.....勝手に死ぬのも、勝手に居なくなるのもダメ。」
『....わかった。約束するよ。万次郎。オレは絶対にマイキーから離れない。何があっても....今もこの先も.....オレはマイキーのそばに居るよ。』
「っ、う。」
また泣き出したマイキーをリツカが優しく抱きしめる。
『(どうか....どうか彼の不安が少しでも薄れるように)』と願いを込めて。
いつか来たる幸せの未来を思い浮かべながら、リツカはマイキーの泣き声とは裏腹に晴れ渡った夜空を見上げるのだった。