第9章 8・3抗争
不安を隠すようにリツカはマイキーに笑顔を向けると、震える手でマイキーの手をしっかりと握り返す。
『(お願いします....神様....ドラケンを連れていかないでください。)』
どうか....どうか....
初めて神に祈りを捧げた。
何度も憎み、呪ったことはあれど祈りを捧げたのは今回が初めてだった。
彼が助かれば、日向も杏花も.....マイキーも....
私の大切な人全員が助かる可能性がある。
どんな代償だって払ったっていい。
この先、どんな不幸に見舞われたっていい.....
明日からはちゃんと前を見るから....
ちゃんと自分の運命に目を向けるから.....
だから.....だから
─────連れていかないで
『お願い....神様っ!』
祈り続けてどれだけの時間が経っただろうか、
カチッ。という音と共に手術室のランプが消える。
「!!」
硬く閉ざされていた扉が開き、マイキー以外の全員が立ち上がり、中から出てきた医師へと視線を向けた。
「....一命は取り留めました。」
神妙な趣きの医師が唇を切るとマイキーは隣に立っていたリツカの手をキツく掴む。
「へ?」
「手術は成功です。」
医師のその言葉を聞いた瞬間
リツカは確かに背中に付きまとっていた死神の気配が消える感覚がした。
『成功.....?』
「〜〜〜〜っ!!」
緊迫していた空気が一瞬にして変わり、みんなの顔に笑顔が宿った。
「よ───っしゃああぁぁぁぁ!!!」
「ドラケン君が助かったぞ!!」
「うわああん!ヒナァァ!!」
涙を流しながらも、お祭り騒ぎとなったその場をマイキーは黙って去る。
『マイ────』
「オマエら!外のヤツらに伝えに行くぞ!!」
【はい!】
「リッカも!行くぞ!」
『え、あ、うん。』
三ツ谷にそう言われ外に出ると、あれだけ酷く降っていた雨はもう上がっていた。