第9章 8・3抗争
「.....ケンチンはさ、昔っから言ったことは絶っ対ェ守る奴なんだ。こんなところでくたばったりしねぇよ。そんな不義理絶っ対ェしねぇ。アイツ、俺と天下獲るって約束したからな」
マイキーはそう言うと振り返りみんなに笑顔を向ける。
「だから、エマ、三ツ谷、ぺーやん、タケミっち、リア。ケンチンを信じろ。」
そういうと、椅子に座った。
「大丈夫だ。」
『(マイキー.....)』
「(そうだ。俺らがテンパってどうする。やっぱり強ぇな。マイキー君は。)」
こんな状況だと言うのに自身の腹心を信じ、笑顔を絶やさない彼を見て誰もがそうだ。と落ち着きを取り戻すと、ただドラケンの無事を祈る。
しかし、リツカだけは不安げにずっと自身の掌を見つめていた。
『(あの感覚が消えない.....)』
自分の手から命がこぼれ落ちるあの感覚が手から消えなかったのだ。
12年前の今日のようにずっとリツカの背後に、目の前で人が死ぬ恐怖が、大鎌を持った死神の気配が付きまとっていた。
それはまるで、冷たい寝台に横たわる最愛の妹から無機質な白い布を取り除かれるあの瞬間の恐怖とよく似ていた。
『(怖い.....怖い....怖い!)』
無意識に手が震える。
最悪な結末が脳裏に浮かんでは消え、また浮かんでは消える。
周りの音が聞こえなくなるほど、耳鳴りが鳴って気持ちが悪い。
『(もしドラケンが死んだら?......また私は何も出来ずに失うの?
っ!ダメだ.....今弱音なんて吐いたらマイキーの努力が無駄になっちゃう.....でも────)』
「リア」
『ハッ────』
「怖ぇなら、俺の手を握ってろ。」
『マイ、キー』
「大丈夫だ。」
そう言って重ねられた手は暖かく、でも微かに震えていていた。
『そうだよね。ドラケン.....大丈夫だよね。』
「ああ。」