第9章 8・3抗争
「タケミチ君!」
「リツ兄!」
「ヒナ!」
『エマ!』
「今救急車呼んでるから!」
「ドラケンは!?」
「大丈夫!生きてる!」
その言葉にエマは酷く悲痛な表情を浮かべるとまた涙を流した。
タケミチは救急車の到着を待つためにドラケンをその場に横たえるとエマがドラケンの頭を持ち膝枕をする。
「(血が止まらない....このままじゃ。)」
『.....エマかヒナ。タオルかハンカチ持ってない?』
「「え?」」
「リツ兄....何するつもり?」
『.....救急車が来るまでできる限りのことをする。傷が深いし、恐らくこの血の量、肝臓まで届いている可能性がある。救急車が来ない今やれることをやろう。って言っても止血ぐらいしかないんだけどね。』
「でも...私たち止血の仕方なんてわかんない...」
『時間が無い。おそらくこの血の出方的に、腹部大動脈が傷ついてるかもしれない。早くしないと間に合わなくなる。』
「リツ兄?どうしてそこまで...わかるの?」
『...。大丈夫。全部オレがやるから。エマはドラケンを手を握ってやってて。な?』
『大丈夫。オレを信じて』と不安そうにエマを安心させるようにヘラりと笑みを浮かべ優しく頭を撫でた。
「...わかった。」
『ん。』
エマから手を離すと、リツカはヒナとエマからハンカチを受け取り、ドラケンの止血を始める。
しかし、待てど暮らせど救急車がやってくる気配は一向になかった。
「(遅せぇ。)ヒナ、救急車ここで待ってればいいんだよな?」
「うん。でも...お祭りと雨で道混んでるみたいで...」
弱々しく呟くヒナの隣で何かを見つけたタケミチははっと緊張した様子で息を飲む。
「マジかよ...」
『タケミチ?』
それに気づいたリツカがタケミチに一瞬視線を向けると、彼の目線を追った。
『...っ!?嘘でしょ...』
「リツ兄?」
自身の血とドラケンの血で塗れた手を拭いながらタケミチの隣に立つ。
『「(なんでここに.....)」』
バシャッ!
目の前の現実に絶望する2人に、地に落ちた水たちはまるで現実だと言わんばかりに、音を立てる。
2人の目の前にはドラケンを刺し殺そうと計画したキヨマサ一派の姿があった。