第2章 目を覚ましたら過去だった....
『確か...この辺りに...あった!』
うろ覚えな記憶を頼りに走っていたせいか、辺りはすでに暗く、街灯が夜道を照らしていた。
真っ暗な公園に入り、キョロキョロと周りを見回すと黒髪の少年と歩く赤いランドセルを背負った小さな少女がいた。
『杏花!』
ハァハァ...と息を切らしながら少女の名前を呼ぶ。
「お兄ちゃん?」
懐かしい声が木霊した。
振り返った少女を見てリツカは息を飲んだ。
妹だ。
目の前に死んだはずの蒼葉杏花が居た。
あの日、橘日向と直人共に死んだはずの妹が今ここでは12年前の姿で目の前にいる。
『キョウカ...ほんとに...?』
「え?え?お兄ちゃんどうしたの?」
まだリツカが女だって知らない頃の懐かしい呼び方をする妹を見て目頭が熱くなる。
視界がぐにゃりと歪み、目から頬へと暖かいものが伝った。
「お兄ちゃん、なんで泣いて...って何でボロボロなの!?」
『キョウカッ!!キョウカァァ!!』
泣きじゃくるリツカを杏花は拒絶する訳でもなくただ嬉しそうにぎゅうと抱き締め返してくれる。
それが枯れたと思っていた暖かくてまたポロリと涙がこぼれ落ちた。
「少し落ち着いた?」
『うん。急にごめんな。キョウカ。』
「急にびっくりしたんだからね。何かあったの?」
『...ううん。ううん。何でもない...何でもないんだよ。』
「嘘!お兄ちゃんが何にもなくて泣くわけないもん。どうしたの?」
『.....少し、少し悪い夢を見ただけだから....』
暫くして、落ち着いたリツカは杏花からそっと離れると、杏花の顔を焼きつけるように見つめる。
『そういえばキョウカ、何でこんな時間にここにいるの?』
「塾帰りだよ!てか、塾終わったらナオトとデートするって言ったじゃん!忘れたの?」
『そうだっけ?』
「うん!」
頷く杏花にリツカは記憶を必死に巡らせる。
そういえば、12年前からこの2人付き合ってたなと思い出す。
今考えれば、すごいことだ。
12年後、死ぬまでこの関係が続いているのだから。