第8章 喧嘩とすれ違う思い
『?ケホケホ.....』
「オマエ。タバコ吸うの初めてだろ?無理すんなよ。」
『誰?』
「俺が誰とかどーでも良くね?」
男はそういうとリツカの手からタバコを奪い取り、一気に吸い込むと、フゥ───とリツカの顔に吹きかけた。
『ケホケホッ!ケホケホッ!!』
「タバコはこーやって吸うんだよ。てか、安いタバコ吸ってんな。」
『関係ないでしょ。返して!』
「ヤダ♡"リッカ"にはまだ早ぇーよ。」
『!?何で.....オレのこと....』
「さぁ?何でだろうな?」
"リッカ"という言葉に反応したリツカに男は嫌な笑みを浮かべる。
その笑みを見た瞬間
リツカの背中にゾクリとなんとも言えない恐怖が襲った。
『〜〜っ!とにかく返して!』
「ダーメ。身体悪くすんぞ?」
『オマエに関係ないだろ!』
「関係ないけどさぁーオマエに何かあるとオレが殺されるんだわ。」
『はぁ!?』
「面倒せェなぁ、そんなにタバコが吸いてぇならコレやるよ♡ほら、吸ってみ?」
男はリツカが吸っていたタバコを地面に叩き落とし、踏みにじると自身が知っていたタバコを差し出す。
『.....要らないです。』
直感的にコレはヤバいものだと思ったリツカは顔を背ける。
「そーいうなって」
ガッ!!
『!?』
男は煙を肺いっぱいに取り込むと、リツカを顎を乱暴に掴み、煙を吹きかけた。
その瞬間グラりと視界が歪み出し、身体から力が抜けていく。
『(しまったっ.....)』
「ばは!へぇ耐性が無い奴ってこんなにトブんだ面白ぇ〜」
『何、コレ.....急に目眩が.....』
ずるりと力が抜けたリツカは公園のベンチに倒れ込む。
目の前がぐるぐると周り、少しずつ目が霞んでいく。
「っと、もうそんな時間か。もう少し遊びたかったんだけどなー。じゃーなー。俺の可愛い"天使サマ"」
男はそういうと着信音の鳴った携帯を片手に立ち上がる。
そして優しくリツカの頭を撫ぜた。
「早く俺たちの所まで堕ちて来いよ。」
『オマエ....は....だ、れ....』
「俺の名前は──────」
男の名前を聞く前に不意に一陣の風が吹き荒れ、火照った身体から熱が段々と引いていく。
そしてリツカはそれに安心したのか、そのまま眠りに落ちた。