第8章 喧嘩とすれ違う思い
卍 卍 卍
マイキー達の前から逃げ出したリツカは行く宛てもなくただただ夕暮れの街を駆け抜けていく。
『はぁはぁはぁ.....っ!』
憎たらしい程晴れ渡った空が段々と緋色に染まり煌々とした夕日が地平線の果てに沈む。
気づけばあたりは薄暗くなっていた。
『追いかけてきてはくれないよね.....』
我ながら女々しい考えだとリツカは重苦しいため息を吐き捨てると当たりを見渡す。
無我夢中で走っていたせいか自分がどこから来て、どこに行けばいいか分からない。
『そうだ!ケータイ......って嘘でしょ。』
元々あまり無かった携帯の充電はとうの昔に切れてしまい八方塞がりだった。
『迷った.....』
さて、どうしたものか
あたりは何の変哲もないどこにでもある住宅街
携帯の充電はとうの昔に切れてしまい、使えない。
かろうじて財布はあるが、コンビニは近くに見当たらない。
『はあ.....疲れた.....』
長時間走りすぎたせいか、足がプルプルと震えている。
リツカははぁーと大きくため息を吐き捨てると、たまたま近くにあった公園のベンチに座った。
『暑っつ.....』
暑いのは当然だ。
夕暮れ時とはいえ、今は8月の上旬.....
水分補給もせず、休みなく走り続けたのが仇となったか、身体が重だるい。
なんならさっきから頭痛が酷くて、目が回る。
どの道この身体ではこれ以上は走ることは出来ないだろう。
『少し休憩しよ....』
夜までに家に帰ればいいかな.....なんて考えながら、リツカはポケットからタバコを取り出すと、火をつけた。
『(やっぱり嫌われちゃったのかな.....嫌だなぁ.....)』
リツカは溜息を漏らすと揺らめく煙を見つめる。
『東卍を抜けろ....か。マイキーがそう望むなら私は抜けるべきなのかな。ねぇシン兄もうわかんないよ』
薄暗くなり始めた空に白煙をあげる煙草をおもむろに咥えるとすぅ....と小さく息を吸った。
『っ!?ゔっ!ゴホッゴホッ!やっぱ無理だったっ。』
「ばは!オマエ吸うのめっちゃ下手だな。」
軽く吸い込んだだけで、強烈な苦味と重い煙にリツカは噎せる。
するとさっきまで誰もいなかった隣で声が聞こえてきた。
ふと視線を向けるとそこにはラフな格好をした長身の男が立っていた。