第8章 喧嘩とすれ違う思い
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───翌朝
エマとヒナとのショッピング当日
「ねぇ、あの人かっこよくない?」
「え、めっちゃイケメン!」
キャーキャーと黄色い声援をあげる女の子たちを背に呑気に欠伸を漏らすリツカは昨晩指定された場所でエマたちを待っていた。
『(エマたち遅いなぁ〜)』
「あ、あの!」
『ん?』
暇つぶしに音楽を聴いていると、2人組の女の子たちが声をかけてくる。
「蒼葉くんだよね!」
『うん。そうだよ〜。確か君たちは隣のクラスの.....二宮さんと佐々木さんだよね?』
「え!覚えててくれたの!?」
『うん。この前は生徒会の行事手伝ってくれてありがとね。』
「ううん!また困ったことがあったらいつでも言ってよ!」
『頼もしいね。ありがと。佐々木さん。』
「あれ?そういえば、今日指輪つけてないね。」
『ん?あ〜ちょっとね。』
リツカはそういうと手を隠して苦々しい笑みを浮かべる。
「彼女さんと何かあったの?」
『あはは。面白いこと言うね。二宮さん。オレに彼女はいないよ?』
「え!そうなの!?でもいつもつけてたのってペアリングだよね?」
『ああ。幼馴染とお揃いだったんだよ。でも今は喧嘩しちゃってさ.....ってオレ何話してんだろ。』
ごめんね。と笑うリツカの顔を見た女の子たちはお互い顔を見合わせるとコソコソと話し始めた。
「ねぇ、これワンチャンあるんじゃない?」
「そうだね。今がチャンスかも!....あ、あの!蒼葉くんもショッピングに来たの?」
『ん〜まぁ、そんなとこ。』
人の良さそうな笑みを浮かべ答えると、女の子たちは顔を赤らめる。
「私たちさ、これから映画観に行くんだ!良かったら一緒に観に行かない?その後お茶でも───」
『今日は連れがいるから。』
「え〜別にその連れさんとも一緒でもいいよ?」
『いや。その子のショッピングに付き合う約束してるんだ。だからごめんね?』
できるだけ差し障りがない程度に断っていると、聞きなれた明るい声が聞こえてきた。
「リツ兄〜!」
「リッカ君〜!」
『あ、ごめん。連れ来たから。また今度誘ってよ。可愛いお二人さん。』
にっこりと2人に笑顔を向け、バイバイと手を振るとまたキャーと黄色い声援が飛び交う。