第8章 喧嘩とすれ違う思い
「あれ!?」
「よう、エマ。」
「え!仲直りしたの!?」
エマの興味が外れたことにリツカはやれやれとため息を漏らし口を噤むと、石段に座り、ヘディングをするマイキーを見つめた。
「どういうこと?あんなに喧嘩してたのに!?」
「エマ、うるさい。」
「してたっけ?」
「心配したんだからね!」
ムンッ!とエマは怒ったように両手を腰を当てる。
「あ、そうだ。リツ兄!」
『ん?どうした?エマ。』
「明日、ヒナとショッピングするんだけど付き合って欲しいの!」
『いいよー。どっちで行けばいい?』
「ん〜。リツ兄の方で!朝から集合ね。」
『オッケー。荷物持ちの方ね。』
リツカはガラケー片手に立ち上がる。
「帰るの?」
『うん。』
「マイキー!リツ兄帰る───『エマ!』
「え、何?」
『.....まだそこまで暗くないし、一人で帰るよ。マイキーに迷惑かけちゃいけないし。』
「え、でも───」
いつも一緒に帰ってるじゃん。と口にしようとするエマを咎めるようにリツカは自分の口に人差し指を当てた。
『今日は一人で居たい気分なんだ。』
「.....わかった。」
『じゃあ、また明日ね。エマ。』
リツカは貼り付けた笑みをエマに向けると、座っていたエマの頭を優しく撫で、手を振って公園を後にする。
「リツ兄....」
小さくなるリツカの背中を見て、エマは少し心配したようにドラケンの元へと駆け寄った。
「ねぇ。ケンちゃん。リツ兄元気なかったけど何かあったの?」
そう問われたドラケンは視線を泳がせ、首に手を当てると迷ったように言葉を濁しながら口を開いた。
「あ〜実は─────」