第8章 喧嘩とすれ違う思い
『ねぇ、ドラケン。状況だけでも────』
そこまで言うとリツカの顔が青ざめ、一瞬『早くお見舞い終わらせとけばよかった』と後悔する。
それ何故か....
目の前に修羅場が広がっていたからだ。
どうやらお見舞いから帰るドラケンと、ちょうどお見舞いに来たマイキーが鉢合わせたのだ。
「あん?なんでテメェがココいんだよ?」
「あ?テメェこそなんでココにいんだ。」
「え!?マイキー君!?」
『(うわぁ.....シリアだ.....治安のいいはずの日本があそこだけシリアみたいになってるよ.....近づきたくないなぁ。)』
なるべく2人にバレない程度の距離を保ち、様子を伺う。
「オレはタケミっちのお見舞いだよ。」
「俺もそうだよ。」
「は?タケミっちは俺のダチだし、お前には関係ないじゃん。なぁタケミっち?」
「え?えっと.....」
「あ?何言ってんの?俺のダチだよなぁ!?タケミっち。」
「あぅ.....」
バチバチと2人の間に火花が散り、辺りがどんどん剣呑なムードになっていく。
これはやばいと思ったタケミチがすぐ様止めに入るが2人は止まることは無かった。
『(うわぁ....)』
ライオン(マイキー)と龍(ドラケン)の板挟みを食らうコーギー(タケミチ)を前に同情の念が沸き上がる。すると
「リッカ!リッカ!((ボソッ…」
と頭上から声が聞こえた。
『?』
上を見上げると、目の前の修羅場に顔面蒼白の溝中五人衆が此方を見て、止めろと言わんばかりに指を指していた。
『.....(止めろってことね。)』
よくもまぁ、簡単に言ってくれるものだ。
私はあの日からマイキーと折り合いが悪く、気まずくてまともに顔を合わせてない。
ましてや今日はドラケンと行動を共にしている。
それを彼が知ればどうなるだろうか?
言わずもがな。
確実に機嫌を損ねることは目に見えていた。
しかし、このままにする訳にも行かず、目の前のカオスな惨劇にリツカは大きなため息を漏らすと、3人に向かって歩いていく。