第7章 分かたれる道
「お兄ちゃんがお義母さんから杏花をずっと守ってくれてたの知ってる!悲しい時お兄ちゃんは側に居てくれたから、辛くなかった。だから、杏花は蒼葉家に来たことも、お兄ちゃんが杏花のお兄ちゃんである事も後悔してない!むしろ幸せだよ!」
口にはクリームが付いていた顔で眩しい笑顔をうかべる。
『本当に?』
「うん!」
『そっか。なら良かった。』
「お兄ちゃんくすぐったいよ。」
リツカは口に着いたクリームを拭ってやりながら、幸せそうに笑った。
「あ、そうだ。今度の授業参観用に夏休みの宿題で将来の夢の作文が出たの!どう書いたらいいかな?」
『将来の夢.....?』
「うん。杏花ね死んじゃったお母さんと同じ看護師さんになりたいんだ!お兄ちゃんはあるの??」
『(将来の夢....か。何だったかな.....)お兄ちゃん将来の夢覚えてないな....思い出したら教えてあげるよ。』
「えー!それ教えてくれないやつじゃん。」
『あはは。でも、杏花は看護師かぁ....いいね。絶対になりなよ。』
「?うん!杏花絶対になるね!」
『約束。杏花ならなれるよ。お兄ちゃんが保証する。』
「ほんと?」
『本当。絶対に成れる。だって────』
「あれ?杏花ちゃんとリツカさん?」
リツカが何かを言おうとした瞬間聞きなれた声が2人の耳に届く。
声の方向に視線を向けると、まだ幼さが残る12年前のナオトがこちらを見つめていた。
「ナオト!どうしてここに?」
「ムーの雑誌を買いに。2人は?」
「お兄ちゃんとショッピングに来たの!」
「へぇ〜そうなんだ。」
ナオトの顔を見た瞬間
過去に戻ってきた目的を思い出しリツカはハッとする。
『(そうだった!)』
急に立ち止まったリツカに杏花が心配そうに顔をのぞき込む。
「ん?どうしたの?お兄ちゃん?」
『ごめん!ナオト!杏花を頼める?』
「え、ちょ、お兄ちゃん!?」
『ごめん!急用思い出した!これで好きな物買っていいからさ!』
リツカはそう言うと財布を投げ渡し、止める杏花の声も聞かず、とある場所へと走り出した。