第7章 分かたれる道
卍 卍 卍
「それでね〜ナオトが────」
『(戻ってきた?)』
「おーい?聞いてるの?」
『(見たところ見慣れない場所....どこだ?)』
「ねぇ〜?ねぇってば!お兄ちゃん!!」
『!?』
クラクラと歪んでいた視界がクリアになると目の前に可愛らしいの顔がドアップで写り込む。
リツカはそれに思わずびっくりすると、重心を後ろに仰け反らせた。
『うわぁ!』
ドシンっ!!重心を支えられなかった身体は重力に従い下へと落ちると、リツカはそのまま尻もちを着いてしまった。
「お兄ちゃん!?大丈夫??」
『大丈夫大丈夫.....ちょっとビックリしちゃっただけ。』
パンパンと埃を払いながら立ち上がると優しく杏花の頭を撫でる。
「もう、最近お兄ちゃんボォーっとしてばっかりだよ。」
『ごめんごめん。(杏花が生きてる。ここに居るんだ....)』
小さな温もりにリツカは少し泣きそうな顔をする。
「お兄ちゃん!こっちの服とこっちの服どっちが似合うと思う?」
『杏花にはどっちも似合うよ。』
だって私より可愛くて、女の子らしいもん。
本当は幸せになるはずだったんだ.....私があんな事しなければ...ナオトとずっとずっと.....
「もぉ〜お兄ちゃん!いつもそればっかりぃ!仕方ないどっちも買おうかな.....」
『杏花』
「ん?」
『杏花はさ、蒼葉家に来て、オレが兄になって、1度でも良かったって思ったことある?』
「.....急にどうしたの?」
服屋を出て昔よく行っていたクレープ屋さんのクレープを食べる杏花は不思議そうに首を傾げる。
『オレが兄じゃなかったら....あの人が杏花の父親じゃなかったら杏花はお母さん....相楽桃子さんと今も幸せに暮らしてたかも知れない....なのに。』
「.....」
『桃子さんが死んで、杏花がこの家に来てから、杏花はあの女から虐げられてきた....そんな杏花が幸せだったのかなって.....』
リツカの質問を聞いて杏花はゴクン。と口に頬張ったクレープを飲み込むと口を開く。
「最初はね、帰りたいって思ってた事はあるよ。だってパパは滅多に家に帰ってこないし、お義母さんも私に冷たいもん。」
『!』
「でもね────」