第7章 分かたれる道
『長内君。オレの目を見て。』
「っ....」
怯え焦点の合わない目で長内はリツカの青紫の瞳を見るとヒュッ!!と喉を鳴らし、立ち上がる。
「おま....お前っ!あ、アオバ....蒼葉り、六花....!!」
『うん。久しぶりですね。長内君。』
「ヒィッ!やめろ!殺さないでくれっ俺は何もっ、何も話してない!!」
急に声を荒らげ、尋常でないほど怯えだした長内にリツカは彼の両頬を少し冷たい手で包み込み目を合わせる。
『少し落ち着いてください......オレは12年前に東卍を抜けてます。だからオレはもう東卍の隊長じゃないし、アイツらとは関係もない。』
大丈夫....大丈夫ですよ。と優しく問いかける彼女はさながら天使か、聖母のようだと、長内は思う。
冷たくも何処か暖かい彼女の手に不思議と恐怖が薄れていき、座り直すとゆっくりと息を吐く。
「.....」
『言えるところだけでいいんです。話してくれませんか?オレはメビウスとの抗争に参加してないんです.....だから何も分からない。教えてください。何があったですか?』
「.......確かに東卍と抗争はした。でも殺したのはメビウス(オレら)じゃない。」
ガタガタと震えながら長内は息を荒くする。
「あれはきっかけに過ぎなかったんだ。あの後東卍は内部抗争を始めた。」
「え?」
『それはなぜ?』
「わからねぇよ!でも8月3日...ドラケンが死んだ。全部"アイツ"の策略だったんだ!」
そう話す長内の瞳は動向が縮小し、恐怖が限界へと達していることが容易に読み取れる。
「アイツ?」
「....すまない。これ以上は話せない。」
ヒューヒューと浅く荒い息を漏らしながら長内はそう言うと「東卍と関わりたくないんだ....」と弱々しく呟いた。
ブーブー
携帯のバイブ音が鳴る。
「すいません。親方に怒られるんで。もう行きます....」
「お手間を取らせてしまい、すみません。」
「ありがとな。」
『ありがとうございました。』
逃げるようにその場を去っていく長内に謝罪の意込めて感謝の言葉を口にする。
「ドラケンさえ死ななければ....俺も....」
『......』
苦しそうに長内は呟くと、まるで何かを悟ったような顔をしてカフェを出ていった。