第7章 分かたれる道
『私も経験あるから....未遂だったけど....今考えてみれば私は運が良かったのかも。あの時、三ツ谷が止めてくれなかったら私、仲間に犯されてたかもしれない....』
「!?」
『12年前。ドラケンが死んで、東卍を裏切る少し前だったかな....女だってバレて、マイキー派の人に襲われたんだ.....お笑い草だよね。』
「そんなっ...。」
『仲間だって思ってたのに、触れられるのも、性的な目で見られるのも全部全部気持ち悪くて、下卑た男たちの笑い声を聞く度に、腹の底から恐怖が湧き上がってきた。
苦して悔しくて....自分が惨めで....ただ目の前の現実が嫌で仕方がなかった。』
「.....」
『でも多分あの子は私よりもっと怖かったし、痛かったし、気持ち悪かったんだと思う。ましてや暴力まで振るわれてるんだもん。目覚めたくないのは当然だよ。』
そこまで言うとリツカは今も眠り続ける哀れな眠り姫へと悲しそうな視線を向ける。
「あんなに優しい子が、可愛かった娘が.....こんな変わり果てた姿で.....」
「うぅっ....」
耐えきれなくなった母親は嗚咽を漏らしながら、泣き始める。
「帰ってくれ。もう二度と私たちの前に現れないでくれ。」
「これからメビウスとモメる。不良(オレら)の世界のことは不良(オレら)の中で片付ける。東卍(ウチ)のメンバーにもみんな家族もいれば大事な奴もいる。
関係な人巻き込んじゃダメだ。周りのヤツ泣かしちゃダメだ。」
ドラケンは無機質な廊下を見つめる。
「下げる頭持ってなくてもいい。人を思う心は持て。」
「...ケンチンは優しいな。ごめん。ケンチン。俺ケンチンが隣にいてくれてよかった。」
マイキーの悲しそうな声が廊下に木霊する。
リツカはそれを見て目を伏せ、タケミチは納得したような顔をしていた。
「リッちゃんが言ってたこと。少しわかった気がする。」
『え....?』
「ドラケンが死んでなんでマイキーが変わっちまったか。12年後の東卍がなんで極悪集団になっちまったのか......リッちゃんが言ったようにドラケンはマイキーの心だ。足りないものを補ってる。」
『うん。ドラケンとマイキーは2人で1人だからね。いつも一緒だった。』
リツカはそう言うと廊下を歩いて行く2人を見る。