第1章 ※笑顔の裏側
(橋本さんは何を…杏寿郎さんの恋の噂について私が悩んでいる事を明け透けに話したのかと思ったのに……。それに聞くまでもなく恋仲だろうだなんて一体…、)
杏「清宮さん、聞いているか。」
「え……あっ、すみません!」
杏「彼とは恋仲ではないのだな。では君が昔から想いを寄せている男とは誰だ。」
「そ、れは…………あの、」
杏「答えてくれ。もう心の内を隠して生活するのは止めだ。俺も正直に話す。なので君も全てを吐いて欲しい。…どんな結果でも俺は受け止める。その上で君との関係をより良いものにしていきたいんだ。」
「…………より良いものに……?」
杏「そうだ。俺は君と…良い関係を築きたい。その為にまずは君の想い人を教えてくれ。」
「……知って、どうするのですか。」
杏「彼の良い所を学び、精進するつもりだ。」
その言葉に清宮は呆気に取られる。
「………杏寿郎さんは…ご自身の恋を諦め、家庭を、…私を……選ぼうとしてくれているのですか……?」
それまで真剣な顔をしていた杏寿郎はそう問われるときょとんとしてしまった。
杏「恋…?恋を諦めて君を選ぶ?何を言っている。俺が他の女性を慕っているとでも聞いたのか。」
心外そうな声色に清宮は戸惑いながら頷く。
すると杏寿郎はハッとして清宮の手を握った。