第1章 ※笑顔の裏側
見上げた月が放つ淡い光が自身等の関係のように今にも消えてしまいそうに儚く見え、つーっと涙が伝ってしまう。
その涙をどこか他人事のように感じながら清宮は立ち上がった。
(杏寿郎さんに見られてはいけない。優しいから…きっと板挟みにさせてしまう。)
そう思うと清宮は度々引き篭もる自室へと足を運んだのであった。
一方、頭を冷やすと言った杏寿郎は外を軽く歩いてから屋敷に戻ってきた。
そして案の定、先に寝ているようにと伝えた清宮の姿が寝室に見当たらないことを確認すると溜息をついて冷たい布団に入る。
杏(いつまでもこうしてはいられない。あの男と話をしよう。)
―――
明「……手短に頼みます。」
杏「ああ。」
睨み合う杏寿郎と明夫は清宮と共に長期の合同任務中だ。
そして今は皆が眠りに就いた朝方である。
元々話をしようとしていたのだが、先程 許し難い光景を目にした為に急遽一日目で呼び出したのだ。
その光景とは明夫が清宮に口付けているというものであった。
長い戦いで疲弊していた清宮は藤の花の家紋の家に着いて早々に眠りかけてしまい、明夫に部屋まで送ってもらったのだ。
そして密室に二人でいさせる事に抵抗を感じた杏寿郎が後をつけ 現場を目撃した、という流れだ。
正確には未遂で終わっていたのだが、明夫は
敢えてそれを否定せず 夫婦の問題を自身で解決出来ずにいる杏寿郎を終始睨んでいる。