第1章 ※笑顔の裏側
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杏「本日はよろしくお願い致します!!」
「こちらこそ、よろしくお願い致します。」
そう言って頭を下げるも清宮は内心首を傾げていた。
見合いの席に杏寿郎が一人で来たからだ。
(お父様はご健在でいらっしゃると思ったのに…。)
杏寿郎は大きな目でそんな清宮の戸惑いを見抜き、少しだけ眉尻を下げて微笑む。
杏「父は少し体調が良くないのです。お許し下さい。」
「そうでしたか…。お会い出来なくて残念ですが無理にいらっしゃるよりずっと良いです。お体を大事になさるようお伝え下さい。」
それから清宮の両親はすぐに気を利かして二人きりにさせ、清宮は喜びと焦りや戸惑いから机の下で両手の指を絡ませては解いて落ち着き無くしていた。
しかし清宮は顔色を操る事には長けていた。
机の下は大慌てであったがそれより上は澄ました笑顔を浮かべている。
杏寿郎も感情を読み取りにくい笑顔を浮かべたまま清宮の笑顔をじっと大きな目で見つめていた。
杏「……………………。」
「……………………。」
長いこと沈黙が続いた為に清宮が何でも良いから話題を出そうとした時、杏寿郎は机から離れてバッと頭を下げる。
「えっ」
杏「清宮さん、貴女さえ良ければ俺の妻になって頂きたい!!」
「…………。」
呆けて何も言えないでいると杏寿郎は今度はバッと頭を上げて真剣な顔を向けた。