第1章 ※笑顔の裏側
(私が選んだ…………、)
そう繰り返しながらも『逃げ出してしまいたい。』だなんて気持ちが芽生えてしまう。
「お願いです、これ以上言わないでください。これ以上言われると……、近くに居る事自体にも耐えられそうにありま、」
清宮がそう言い掛けた所で杏寿郎は清宮の口をパシッと塞いだ。
そして信じられないものを見るような目を向ける。
杏「駄目だ、離縁などさせないぞ。……君にはやるべき事があるだろう。」
(そうだ……子供…、作るって約束したじゃない……。それまでは……、)
そう思うと清宮は目を瞑り、杏寿郎に揺すられる中 再び涙を流した。
しかし、子供さえ産んでしまえば終えられると思ったにも関わらず杏寿郎は子種を外に出した。
杏「ああ、つい間違えて外に出してしまった。」
(ああ…、癖、なんだ……。慕っている女性ともこういった事を……。)
「………先に寝ていて下さい。一人で出来ますので。」
事後の甘い会話どころかそれ以外何も言わずに清宮はよろよろとしながら部屋を出て身を清めに行った。
そして、その晩は夫婦の部屋に帰らず 別の部屋に布団を敷いたのであった。