第1章 ※笑顔の裏側
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杏「君が今何をしているのか、よく意識してくれ。」
(……え…………?)
清宮は行為が始まってすぐに言われた言葉に衝撃を受け、目を大きくさせた。
行為中だけは自身しか知らない杏寿郎を独占出来ているように感じる唯一の時間だった。
そうであるのに、それを『今している行為は条件として提示したただの愛の無い子作りだ』と明言されたからだ。
それも何度も何度も繰り返される。
清宮は義務と言い放たれる度に打ちのめされ、行為に飲まれながらも涙を溢した。
杏「何故泣く。」
(何故………?そんなの…決まってる。私が心から慕っている貴方には他に想いを寄せる女性がいて、私には子供を産む義務しかないから……。)
「それ……言うの、止めてください…………つらいです。」
余裕を欠いていて口が軽くなった清宮は朦朧としながら思わずそう本心を伝えてしまった。
すると一瞬空気が凍る。
しかし杏寿郎はすぐに清宮の顔を覗き込んで感情を見せない顔を向けた。
杏「……駄目だ。現実から目を逸らすな。」
その言葉に清宮は瞳を揺らし、絶望の色を滲ませる。
(……私が、選んだ道でしょう…………。)
いつも通りそう自身に言い聞かせるも、愛を感じた気になれるこの時間さえも粉々に潰されると清宮の中の何かも壊れてしまった。