第1章 ※笑顔の裏側
杏「すまない。体が冷えないうちに入ろう。」
「はい。」
その返事を聞くと杏寿郎は清宮を先に布団へ入らせる。
そして自身も布団へ入るといつも通り体を離して横になった。
杏寿郎は子作りはしているにも関わらず、未だ清宮に触れる事に慣れていないのだ。
杏(抱き締めながら寝られたらどんなに良いだろうか。)
杏「よく疲れを取ってくれ。」
「はい。杏寿郎さんも…お休みなさい。」
清宮は杏寿郎がいつも自身に布団を譲ってはみ出て寝ていることに気付いていない。
只々ひたすら体を重ねる以外には触れてこない杏寿郎に心をすり減らしていった。
(…………………………つらいな…………。)
じわりと滲みそうになる涙を得意な感情コントロールで抑え込み、清宮は背中側にいる杏寿郎に気取られぬうちに寝てしまおうと目を瞑る。
(自分が選んだ道でしょう。しっかりしなさい。)
そう自身を叱り、冷静さを取り戻すと清宮はフッと力を抜いて浅い眠りについた。
その様子を清宮の方を向いて横になっていた杏寿郎はずっと見ていた。
杏(また身を震わせていたな。すぐに抑え込んでいたが…。俺に抱かれるのがそんなに嫌なのだろうか。だが、している最中は満更でも無さそうに見える。これは一体…、)
そんな悩みを抱えると経験が豊富そうな同僚に相談しようと決心したのであった。