第1章 ※笑顔の裏側
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そんなすれ違いを続ける二人であったが夜には大きな進展があった。
それは清宮が痛みを感じなくなったからだ。
更に慕う男に大事そうに抱かれれば知識がない清宮の体も自然と熱くなる。
行為中、一杯一杯になっている清宮は無意識のうちに艶のある幸せそうな声を出すようになっていた。
その時だけは杏寿郎も想いが通じ合えているような気持ちになって涙が滲みそうになる程幸せな心地を味わうことが出来たのであった。
しかし杏寿郎が清宮の体を思い遣っていた為にその回数は決して多くはなく、清宮は子を宿すことが出来ずにいた。
杏「焦らなくて良い。子は天からの授かりものだと言うだろう。」
「はい…。」
月に二回の行為の後、杏寿郎は申し訳無さそうにする清宮の頭をそっと撫でた。
そうすると自身に見せつけるように清宮の髪に触れた男の顔が脳裏にちらつく。
そして眉を顰めながら頭に置いた手を滑らせ そのまま髪を梳いた。
杏寿郎は努めて優しく愛情を込めて触れたが 清宮は肩を揺らして緊張したように身を固くさせる。
杏「………………。」
男には髪を好きに触らせていた為に杏寿郎はその反応の違いから酷い嫉妬を覚え、ぐっと拳を握りながら手を引いた。
杏(……何が夫婦だ。俺がどんなに慕おうとも、どんなにあの柔らかい顔を好ましく思っていようとも、あの男にその顔を見せた回数は俺のそれとは桁が違うのだろう。)
珍しく考えても仕方の無い事について長く考えていると清宮は体を拭き終えて杏寿郎に向き直り、杏寿郎が布団に入るのを待っていた。