第1章 ※笑顔の裏側
明(彩が苦しんでいる時にほっとするなんて最低だな。俺の気持ちにはとりあえず蓋だ、蓋!だけど…、)
明夫は清宮から視線を外すと今度は杏寿郎の方を向く。
すると視線がばちりと合ってしまった。
明(……俺を、見てたのか…?)
燃える瞳と笑みを一切浮かべていない顔に気圧されて明夫は思わず瞳を揺らす。
だがすぐに拳を握って睨み返した。
明(彩を身動き取れなくさせて苦しめてるのはあんただろ。あんたと結婚してこいつが幸せそうな顔を見せたことなんて一度も無い。それなら…俺の方がよっぽど…、)
そう思いながら浮かない表情で刀の手入れをしている清宮に視線を落とし、明夫ははたと思い留まる。
明(俺と彩が何だ。俺は…彩家と釣り合うような家柄じゃない。元々土俵にも上がれていないんだ。)
―――
まだ日が暮れるよりずっと前、周りに寄ってきて噂について訊く隊士達に包み隠さず答えていた杏寿郎は 視界の端で初めて見る男が清宮に親しげに話しかけた為、口を薄く開いたまま固まった。
杏(あの男は誰だ。清宮さんがあの様に気を許しきって話す姿など見た事がない。)
そうして笑みを失くして見つめていると男が振り返る。
そして、あろう事か自身を睨んだ。
杏「………………その男か。」
隊士「煉獄さん…?」
杏寿郎は怪訝な顔をする隊士に囲まれながら その男が清宮に視線を落として瞳に憂いの色を滲ませる様子を呆然として見ていた。
二人がまるで "とある障害" のせいで結ばれない恋仲の男女であるかのように見えたからだ。