第1章 ※笑顔の裏側
杏「だが…、震えているぞ。頼む。教えてくれ。」
「あっ」
強引に顔を上げさせられると涙をぽろぽろと溢している清宮は慌てて手で顔を覆い隠した。
「ごめんなさい!!違うんです…大したことはなくて、その…、ただびっくりして……。」
杏「……そうか。」
杏寿郎は清宮を抱き寄せると暫く背を撫で、震えが無くなった所ですっかり萎えてしまったものを抜いた。
「あの…、」
杏「子作りはまた次の機会にしよう。」
そう言いながら頭を撫でてくれる杏寿郎の表情は違う涙が出てきてしまいそうな程に温かい。
清宮はその安心させるような微笑みを見つめながら頷いた。
その晩は結局清宮は清宮の布団へ戻って寝ることになり、杏寿郎は何とも遣る瀬無い気持ちで清宮の後ろ姿を見つめながら横になった。
杏(泣く程に嫌なのか。慕う男の事でも思い出したのだろうか。)
そうぼんやり思いながら見つめていると清宮がビクッと肩を跳ねさせて上体を起こす。
「え、あっ」
杏「どうした。」
「ね、寝てて下さい!大した事ではありませんので…!」
清宮はそう言うと急いで部屋を出てどこかへ走っていってしまった。
杏寿郎は清宮が珍しく足音を立てて走る様を呆然としながら見送った後、清宮に寝ているようにと頼まれたことを忘れて後を追った。