第1章 ※笑顔の裏側
杏『この三年間、鬼の首を切ったことはあるか。』
『………………ありません。主に後方支援を行っていました。』
その言葉に杏寿郎の胸はざわついた。
―――この娘は鬼殺に向いていない。
そう思わざるを得なかったからだ。
そして眉を顰めると清宮の瞳を焼いてしまいそうな程目に力を込めて清宮を見つめた。
杏『分かっているかもしれないが君が生き残ったのは奇跡である可能性が高い。君の腕は剣士にしては細すぎる。後方に回っていた理由は何だ。前へ出られる力量はあるのか。後ろへ行かざるを得なかっただけなのではないのか。』
『……………………。』
自身の才能の無さを日頃より痛感していた清宮は落ち着いた無表情の顔をしながらも 杏寿郎の気迫に圧されて焦りに焦り、内心はどう返事をすれば良いのか纏められずにいた。
澄ました顔で黙っている様は自身の弱さを認めずにただ意地を張っているようにも見える。
だが杏寿郎は清宮の二面性に気が付いている。
そしてきちんと弱いという自覚がある故の沈黙なのだろうと判断すると折れるように溜息をついた。
杏『前線に立てば狙われる可能性も増える。だが稀血の君を家に置いていくのも気掛かりだ。……俺が守ろう。』
『……え…。』
杏『これでこの話はお終いだ!!それから住む場所についてだが…、』
清宮はそんなやり取りを思い出しながら頬を緩ませて千寿郎から休憩の茶を受け取る。