第1章 ※笑顔の裏側
杏寿郎は『子を生してくれ』と言った割りに清宮にあまり触れようとしなかった。
見合い以降、手さえ繋いでいない。
しかしその事実と矛盾するように二人は毎日共に暮らしている。
それは杏寿郎が清宮を継子とし、鬼殺隊として動いている時も共にいられるようにと計らったからだ。
これは清宮の両親からの願いでもあった。
杏「清宮さん。そろそろ休憩にしよう。」
「はい。」
清宮は黙々と鍛錬をこなす為 二人の私的な会話は食事の前後くらいだ。
清宮に継子として側に居るようにと伝えたのも食事をする前であった。
杏『ちょっと良いだろうか。』
婚約してから初めて煉獄家に上がらせてもらった日、杏寿郎は改まって清宮に問い掛けた。
それに応えるように清宮も座り直す。
『何でしょうか。』
杏『突然だが君には俺の継子として動いてもらいたい。側で俺が君を守ると約束すれば君のご両親も鬼殺隊に対して寛容になってくれるだろう。俺も安心出来る。』
自身を思い遣る言葉に清宮は少し頬を染めつつしっかりと頷いた。
それを見て杏寿郎は嬉しそうに微笑む。
杏『では君の呼吸と階級を教えてくれ。』
『使うのは水の呼吸で階級は壬(みずのえ)です。』
壬とは下から二番目の階級だ。
それを聞いて杏寿郎は少し目を大きくさせた。
杏『そうなのか。まだ入って間も無いのだろうか。』
『…………三年になります…。』
清宮がそう言うと杏寿郎はとても鬼の首を切れそうにない清宮の腕を見る。