第15章 Merry X'mas
「あぁ!?」
『言いたいことはそれだけか、と聞いているの。』
「伊織、さん…」
今まで一言も言葉を発さなかった伊織さんが稀咲にそう問いかけた
「だったらなんだ…!」
『ここまで来ると勘違いって言葉だけじゃ足らないわね。
万次郎の夢は確かに"不良の時代を作る"こと。
別に東卍を大きくすることなんかじゃない。』
「…っ、そんなことは分かっている!
だがそれは結果論だ!!その夢の過程で必ず東卍はデカくなり闇は生まれる!!
だから俺が…『巫山戯るな』
「あ?」
『巫山戯るなと言っている…!!!』
伊織さんはそう言いながら一歩前に出てマイキーくんの前に立った
マイキーくんが何か言おうと口を開いたが、伊織さんはそれを片手で制するとキッと稀咲に鋭い視線を向けた
「不味いな…」
「え?」
「伊織の奴、完全にブチキレてやがる…」
「ああ」
場地くんと三ツ谷くんがそう小さく声を掛け合う
確かに、俺の目から見ても伊織さんから放たれる圧は相当なものだ
あんな伊織さんは今まで見たことがない
…俺が稀咲の立場なら間違いなくちびる
『アンタには俺が必要だ、とか言ったわね。
違うでしょう?稀咲…お前の目当ては東卍という組織…!
万次郎の夢なんて微塵も視界に入ってない!そうだろう!?』
「っ!」
『全ては勝手なお前の私怨の為!!
それをあたかも万次郎の為だと薄っぺらい言葉を並べ、都合のいいように東卍を利用してきた!
気づいてないとでも思った?それともその自慢の頭脳が誰よりも優れているとでも思ったか?
自惚れるなよ…
悪意ある自分勝手な望みを実現させようと万次郎と東卍を利用するお前にここでの居場所なんかない!!!』
「…」
「…」
「ハァ…ハァ……」
伊織さんが言葉を一度切ると、辺りは水を打ったように静まり返った
息をするのにも躊躇うような空気の中、伊織さんは一度息を吐くと再び口を開いた