第15章 Merry X'mas
大寿の背後に柚葉が忍び寄るのが見えた
そしてそれを口に出したときには、柚葉の持つナイフは静かに大寿の身体に深く突き刺さり、その場の時が一瞬、止まった
「っ!!」
ゴッ…!!!
ズザァ…!
「くっ…!!!」
大寿は俺の首から一度手を離すと、柚葉に向けて拳を振り抜いた
柚葉はすぐに起き上がり、バッとこちらに視線を向ける
「んん!?」
「…」
「柚葉テメェ…
やりやがったなぁぁぁああ!!!!」
「!!!」
ガッシャァァン!!!
大寿がふり投げた椅子が柚葉のすぐ近くに落下する
…柚葉が、大寿を刺した…!?
なんで…!!?
何が起こってる…!!
「柚葉…なんでここに…?」
「…八戒…お前を、助けに来た…!
アタシが全部ここで…!終わらせる…!!!」
「っ、なんでだよ…なんで来ちまうんだよ…!!
タケミっち!!」
「!?」
「テメェ…柚葉に話したな!!?」
「へっ!?」
「俺の決意を話したのはテメェだけだぞ…!!」
そんな…俺は誰にも…
「違う…花垣じゃない。」
「え…?」
「稀咲鉄太に全部聞いた…!!」
稀咲…だと…!?
っ、そうだ…稀咲には、、、今日の作戦を決行する4人には、話していた…!
でもちょっと待て…だとしたら、、、稀咲が柚葉をけしかけたってことか…?
「はぁ…はぁ…!」
なら…それなら…もしかして元の歴史でも、八戒は大寿を殺していない…?
「っ!!!」
どこかで…ずっと何かが引っかかっていた気がした
ずっと、ずっと前からおかしかった…!
俺は何もしていないのに、八戒は大寿を殺し損ねた
そして柚葉が大寿を刺した…!!!
つまり…元の歴史でも大寿を殺したのは柚葉だったんだ…!!!
八戒は大寿を殺してなんかいない…!!!
─八戒くんはそういうタイプの子じゃない
─ 八戒くんは大寿さんを殺さないわ
─ 殺さない、というより、殺せないのよ
嗚呼、そうか
伊織さんはずっと、この部分から疑問を抱いてきたんだ
自分の知る八戒像と未来の話がどうにも結び付かなかったから
自分の目で見てきた八戒のことを信じ続けていたから
だからずっとああ言っていたんだ