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ONE MORE CHANCE【東リべ】

第14章 Choice


かなり走ってきたんだろう
八戒の息は上がりきっていて、この寒さだというのに汗を滲ませている

ベンチに座って息を整えたところで、八戒が口を開いた





「俺がお礼言ってたって、タカちゃんと伊織さんに伝えてくれるか?」

「え?う、うん…
でも…なんで?」

「…」





八戒はひどく穏やかな表情のまま、さらに言葉を続ける





「ウチの家庭複雑でさ、父子家庭の上に、父親はほとんど家に帰らなかった。
だから家庭を仕切っていたのは1番上の大寿だった。」

「…」

「…」

「…アイツは子供の頃から"王"だった。
人より身体がデカくて、単純に力が強かったってのもあるけど…何より人の心を摑む術に長けていた。
取り巻きの奴らはみんな大寿に惚れていた。
それに加え…大寿は暴力を使うのが上手かった。」





暴力を、使う…

まだ癒えない傷がズキリと痛み、大寿に殴られたあの光景がフラッシュバックする
…思わず喉を鳴らしてしまう




「中途半端な暴力は振るわない。やるならトコトン。
それは俺ら姉弟にもだった。
…ボロボロになるまで殴られたあと、大寿は必ず【愛している】と、そう言った。」

「…」

「俺は、愛を苦しいものだと思っていた。
そう育てられたから…それが当たり前だったから…
でも…そんな俺の世界をひっくり返したのが、タカちゃんだった。
衝撃だったよ。
遊びたい盛りに2人のガキの面倒押し付けられて、見るからに辛い家庭環境なのにニコニコ笑ってんだぜ?
タカちゃんが作ってくれたメシ食ってたら、なんかわかんねえけどメチャクチャ泣けてきてさ、、、ミソ汁がしょっぺーしょっぺー」





八戒はそう言いながら、その頃を思い出すかのように笑う

…八戒にとって、三ツ谷くんは本当の兄貴だったんだ
大寿よりもずっと尊敬して、慕って、1番の拠り所だったんだ

2人の絆の深さが垣間見え、俺の顔にも小さく笑みが浮かんでいるのがわかる






「…あの人は言ったよ。
"暴力は守るために使え"ってね。」





─八戒、どんなに苦しくても、力は守るために使えよ





三ツ谷くん…今日も言ってたな、
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