第14章 Choice
「柴家の問題に口出すんじゃねぇぞクソガキ…
…八戒見とけよ」
あ…まずい…
本能的にそう悟る
その間にも大寿はブーツの踵を鳴らしながらこちらに歩いてくる
「兄ちゃんが代わりに尻拭いしてやる。これが絆だ!!!」
「っ!」
ゴ!…ドッ!!バキッ!!!ドゴッ!ゴッガッ!!…ドゴッ!
またかよ…
思わずそう言いたくなる
人生何度目かのタコ殴りにされ、視界がぐわんぐわん揺れている
…でも、コイツ本当にヤバい…
今まで殴られた誰の拳よりも重く、痛い
桁違いなほどの力
嫌というほどそれを感じる
「いい加減にしなよ!!」
「…っ!だめだよ、ヒナ!
アイツはアンタにも容赦しない…」
「でも!黙って見てられないよ!
このままじゃ…タケミチくん死んじゃう!!」
ヒナ…
…ダメだ、柚葉の言う通り…下がってて…
こんな拳、1発もらっただけでヒナなんか吹っ飛んじまう…
俺は大丈夫だから…
そう口に出したいのに、もう声も出ない
…まずい…意識が…
「兄貴!もうやめてくれ!!」
「あ"!?」
「お願いだ!!」
「…」
ドゴッ!…ゴ!、ガッガッ!!!
「兄貴!!」
「…ハッカーイ、人にモノを頼む時は交換条件が必要だろ!?」
「…」
「ちゃんと見合うモノを差し出せよ?
じゃなきゃあ…コイツはここでくたばる。」
「わかった!!」
「あ?」
「…東卍を…東卍を、辞めるよ。」
「…それで?」
「兄貴を支える為に、黒龍に入る…!」
「…」
「だからタケミっちを離せ!交換条件だ!!」
「…いいだろう」
ドサッ
八戒…お前……
俺のせいで…
「タケミチくん!!」
ヒナ…大丈夫だから…
そんな顔、しないで…
口に出ていたのかすら怪しいが、俺の意識はそこでフェードアウトした
最後に見えたのは、俺を背負う大きな背中とどこかで嗅いだことのある花の香りだった