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ONE MORE CHANCE【東リべ】

第13章 Result


『お願い!!離してよ!!』

「…っ、」

『カズくん!!なんで…!?』

「伊織…」

『っ!圭くんっやめて!!!立たないで…!!!』




何を思ったのか、圭くんは壁に体重を預けながらふらふらと立ち上がる
その姿が、12年前のハロウィンの日の圭くんの姿と重なって、どうしようもなく怖くなる

嫌な音が心臓からする
手が…震える




「…お前は…お前だけは、生き延びろよ」

『そんなのいいから、早く一緒に…』




なんでそんなこと言うの?
助かるんだよ…?
間に合うのに…

圭くんは自分の足で歩くと私の両肩に手を置き、そっと頬に触れると晴れた日のような笑顔で言った




「お前に助けられた命、お前の為に使うんだ。
…悔いはねぇ!」



ードン!

『あっ!』

「一虎ァ!!行け!!!」

「っ!」

『いや…待って!!!』





思い切り圭くんに突き飛ばされ、カズくんの腕の中に収まる
と、カズくんは私を抱えるとそのまま走る





「預けたぞ!!!」

「ックソ…場地………ああ!!必ず!必ず守り抜く!!!」





それだけ言うと、カズくんは一度も振り返ることなく雨の中を駆けた

圭くんは眩しいほどの笑みを浮かべて私たちを見送っている





『圭くん!!お願い!一緒に行こう!!
大丈夫だから!!!私がなんとかしてみせるから!!!』





私が必死に手を伸ばしても、圭くんがその手を掴む事はなかった
いくらもがいても、私はカズくんの腕から逃れることはできなかった
そして圭くんが私たちに背を向けると、彼の背中越しには何人もの男の人が見える

嗚呼、そうか

私は…私たちは…誰かに、何かに追われていたんだ











パンパン!!!

ードン!パン!!パン!パン!!








『ああ…あ…、ぁ…ああ………!!』









花火が上がるような、爆竹が弾けるような音が何発も、何発も聞こえた







その頃には私は遠くに行き過ぎていて何も見えなかったけど、きっと今の音は圭くんが聞いた最期の音だったんだろう

残酷にそれだけが理解でき、それと同時に私の頭は電源がぷつりと切れたようにシャットダウンした



涙の出る間もなく、ただ足を引っ張っただけの存在の私は一体彼らのなんだったのだろう


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