第12章 Hospitalization
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嗚呼、気持ちがいい
久々に吹いた
吹きながら脳裏にはみんなで歌ったりして楽しかった記憶が蘇る
その中には真兄もいて、みんな笑ってて楽しい日々
この曲、別にフルートメインの曲でもないから伴奏だけのとこもあるのに何故かみんな好きだった
メロディーを吹いてない時、一本じゃ成り立たないハーモニーを奏でている時もみんなちゃんと聴いてくれた
『っ!ゴホッゴホッ!!』
「!大丈夫ですか!?」
『ゴホッ…だいじょ、ゴホッ!!』
「お姉さん!!」
『ゴホッ!…ふぅ…ごめんごめん、やっぱ病み上がりにはキツかったか〜』
「本当に大丈夫ですか?」
『全然大丈夫!
ちょっと調子乗りすぎちゃった』
「それならよかったですけど…」
流石に肺に負荷かけすぎたか…
イケると思ったんだけどなぁ
吹奏楽の扱う楽器の中で実は1、2を争うほど肺活量が必要なフルート
最初は音を出すのも難しい楽器のひとつだ
『ハハ、あと少しでラストだったんだけどな…
でもいい曲でしょ?』
「はい!お姉さんは吹奏楽やってたんですか?」
『うん。まぁ半年で部活辞めちゃったんだけどね…』
「えー!なんでですか!勿体ない!!」
『えっとね、、、あれ?なんで私辞めたんだっーガシッ!!!
「あ、」
『ん?』
「ハァッ、ハァッ、ハァッ、、」
「ヒッ!不良…!!」
『あ!大丈夫!!怖い人じゃないから!大丈夫よ!
けんちゃん、どうしたの?そんなに慌てて…』
私の肩を掴んだ大きな手
視線を上げるとそれはけんちゃんのもので、走ったのか息が上がっている
180センチ越えの長身に辮髪、極め付けは米神の龍のスミ
怖がる要素しかないけんちゃん
実際半泣きになっている目の前の女の子を宥めてけんちゃんの方を向き直る
いつもなら少し腰を屈めてニカリと笑って誤解を解くのに、今は何故か違う
余裕がなさそうに私を見下ろすだけ
様子がおかしい…どうしたんだろう
『けんちゃん?大丈夫?』
私はフルートを持っていない方の手を彼に向けて差し出した