第11章 Bloody Halloween
場地と伊織が運ばれてくるという部屋の前で俺たち3人は待つ
…後遺症…再発、、、
その言葉がぐるぐると頭を回り、正常な思考ができない
さっきの千冬の様子を見て、俺も最初は素直にそう思った
涙が込み上げてきた
でも、マイキーの心情を思うと、俺はそう言ったらダメなんじゃないかと思った
…三ツ谷はその言葉に絶望したような顔をしていた
マイキーの顔は、見れなかった
マイキーと誰よりも長く共に居た場地
マイキーが誰よりも愛する伊織
その2人のこれまでを知っているからこそ、これからの生活がどう変わるのか、
そしてマイキーは素直に喜べるのか
それが分からなくて、何も言えなかった
ガラガラガラ…
ベッドに寝かされた2人が運ばれてくる
俺たちは吸い寄せられるように2人の元に向かう
「…」
『…』
2人とも、昔とひとつも変わらない寝顔
…息をするたびに酸素マスクが曇り、それを見て柄にもなく安心して自分の頬を涙が伝うのがわかった
前は俺がそっちの立場だった
…目覚めるのを待つ立場っていうのは、こんなにも不安に押しつぶされそうになるものなんだな…
「ズッ…」
後ろで三ツ谷が鼻を啜る音が聞こえる
と、俺の前で2人の顔を見ていたマイキーが右手を伊織の頬に、左手を場地の頬に当てて座り込んだ
「…本当に、よかった……ごめん、、、ごめんな…
でも、、ありがとう………」
そう呟きながら、マイキーの座り込む床にはぽたぽたと水が垂れる
…もう、堪えるなんて不可能だった
俺たちは決して人前では泣かない
…周りを気にせず感情を出せるのは、後にも先にもこいつらの前だけだ
俺たち3人は溢れる涙をそのままに、涙が枯れるまで声を殺して泣き続けた