第10章 Betrayal
ブロロロロロロ…
「…ケンチン」
「おう、2人してシケた面」
『まぁね
やっぱり寒くって』
「関係あるか?それ」
けんちゃんのゼファー
万次郎のバブ
2つのバイクが横に並ぶ
…真兄、、、
「…もう、戻れねえのかな、」
『…』
「…」
…そんな悲しい顔
万次郎だって戻りたいって思ってる
何よりも圭くんが居ないのが耐えられないんだ
カズくんのことは割り切れても、圭くんのことはそうじゃない
「兄貴ならどうすんだろ」
「…さぁ?
ソイツと語ってこいよ。
気が済むまで、さ。」
『…行っておいで、万次郎』
けんちゃんが明るめに声を掛け、私もそれを勧めると、万次郎は一目私たちの方を見てからバブに跨った
私とけんちゃんは遠ざかる万次郎の排気音を黙って聞いていた
「…もう遅ぇ
俺たちも帰るか。」
『うん。』
「送るから乗ってけ。」
『ありがとう。』
けんちゃんからヘルメットを受け取ると、それを被ってけんちゃんの後ろに乗る
万次郎よりもがっしりした腰に手を回すと、けんちゃんはゆっくりとアクセルを回した
万次郎、今あなたが真兄と何を語ってるのか、私にはわからない
でも、大丈夫だよ
万次郎が戻りたいと願うように、圭くんもそう思ってる
ただ圭くんはね、カズくんも一緒に戻りたいって、そう思ってるだけなんだよ
大丈夫、大丈夫
圭くんはちゃんと戻ってくる
私が守る
だから万次郎
カズくんをどうか、カズくんを受け入れて…
圭くんが連れてきて、私がカズくんの目にかかった憎悪の霧を晴らすから
真っ直ぐな目で互いを見れたなら、きっと私たちは元に戻れる
いつか、どれだけ時間がかかっても、いつかきっと、手を取り合える
だから、お願い
暗い波に飲まれないで