第9章 Check
ガシャン!
聴き慣れた鉄格子の音
無駄に分厚い扉の閉まる音が部屋に響く
「…伊織………」
まさか、アイツが会いに来るとはな…
…面会なんて初めてだった
別に親も兄弟もいねえ
こんな俺に会いに来る物好きなんていないと、そう思っていた
ーけんちゃん…?
…変わらねえな、アイツは
大きな瞳に溜まる涙は何者にも変え難いほど美しくて綺麗で、俺のような汚れた人間には少し眩しすぎた
最期に会った時も、同じような目をして泣いていたな
俺は一体、この12年間お前のことを何度泣かせてきたんだろう
…お前たちのこと、忘れた時はひとときもなかったよ
今でも夢に見るんだ
伊織と肩並べてマイキーの背中を見て、場地と三ツ谷とパーちんと一緒にバイクふかして、前を走るマイキーの背中には伊織が乗って笑ってて…
毎日が祭りでキラキラしてた
だが、全ては1日で終わった
稀咲のせいで
マイキーは周りを傷つけることを厭わなくなった
俺と三ツ谷は咄嗟に伊織を守ることだけ考えた
いくらマイキーだって伊織を傷つけることはない
そう思っていたが、アイツは俺たちに言ったんだ
「伊織はどこだ…?
アイツは俺のモンだろ?どうして隣にいない?」
いつもなら笑って応えるが、アイツの目はおかしかった
俺も三ツ谷もゾッとした
そして悟った
マイキーはいつか必ず伊織を傷つける
そして伊織ならそれを受け入れてしまう
2人で一緒に堕ちていく
だから俺たちは伊織を無理やり引き離した
例え2人がそれを望まなくても、それでアイツらが傷ついても
どれだけ恨まれようとも、俺たちはそれを選んだ
マイキーに伊織が逃げたことを伝えると、マイキーは怒り狂うかと思えば、安心したように笑ったんだ
「…そっか、
…ケンチン、三ツ谷、、、ありがとう」