第9章 Check
『あ、あと…』
「?なんですか?」
『ヒナちゃんのお葬式の時…千冬くんにも頭下げさせてごめんね。
あの日けんちゃんが死刑だって聞いて動揺して、ちゃんと謝れてなかったから…』
ー全て私の責任です
ー申し訳ありませんでした
…あのことか、、、
「…別にいいですよ
あの時伊織さんは自分の責任だって言ってましたけど、俺だって東卍に属していたのは事実です。
無責任かと言われればそうじゃないですから…」
『…本当にごめん』
不良の世界では、軽々しく頭を下げるものじゃない
…あの世界では仁義なんかが重んじられる
…自分の着いていく人が頭を下げるなら、下に着く俺たちは当たり前に頭を下げる
自分が着いていく人が命じるなら喜んでその人の踏み台になる
そういう世界だった
確かに今俺はその世界にはいない
…今更それに縛られることはない
だがあの時…
伊織さんだって謝ることはなかった
あの人は全て自分のせいだと言うけれど、東卍がこんな風になったのは彼女のせいではない
責任の一端を担う必要は、本来ない
でも、そんな彼女がアイツに向けて頭を下げたんだ
下げる頭なんか本来持っていないのに…
…伊織さんの中ではまだ、ドラケンくんは生きてる
まだ彼女の中ではドラケンくんは心のままだ
だからこそ人を想うことができてあんな風に躊躇いなく頭なんか下げられるんだ
彼はそんな人だった
そしてそんな彼女が俺の前で頭を下げたんだ
それなら俺だって彼女と共にその業を背負いたい
そう思うと、体が勝手に動いていた
だからあの日の自分の行動に後悔はないし、あの日下げた頭を屈辱だと思うことも、ましてや恥じることもない
あれは俺の意思だ
俺の覚悟だ
昔は場地さんに預けたこの命、今は伊織さんに賭けるという、俺の覚悟だ