第7章 Incident
「伊織さん、残念だったね
トリプルデートできたらよかったのに…」
「ウチもドラケンは来れるって言ってたから、抗争はもう完全に終わったものだと思ってた。
…多分、みんなそう思ってる。
だから伊織は逆に張り詰めてるんだとおもう。」
詳しいことは聞いてないからわからないけど、マイキーがよく言ってる
伊織はいつも相手の二手三手先を読んで動いてるって
だから俺たちはアイツの作戦や話に全幅の信頼を置いてその通りに動けるんだって
それを自分一人じゃなくて、組織を動かすってのは簡単なことじゃない
「マイキーくんは寂しくないのかな。
伊織さんのこと、好きなんでしょう?」
「うん。
でも、マイキーも伊織も、二人とも東卍が大切なの。
お互いに理解してるからあの二人は恋人とかっていう名前がなくても一緒にいられるんだと思う。」
「…本当に、すごくかっこいい人たち」
「うん」
…ウチらの中では抗争は終わったもの
でも、伊織の中ではまだ終わっていない
こうやっていつも伊織が事前の調査から最後の最後の仕上げまで真剣に向き合っているから、東卍は強いんだ
そしてそれを表沙汰にすることなく、基本的には裏でみんなの背中を守ってる
「あ、ねぇ見て、エマちゃん。
この浴衣、とっても綺麗…」
「本当…」
ヒナの指差す方には、紫を基調とした艶やかな浴衣
濃い紫から淡い紫へのグラデーションが花型で、とっても上品
「これ、伊織が着たら綺麗だろうな…」
「私もそう思った。
…ねえ!この浴衣、伊織さんにプレゼントしない?」
「でも、伊織お祭りには来ないって…」
「別にお祭りじゃなくても着ていいでしょう?
それに、マイキーくんも見てみたいはずだし!」
…確かに、ヒナの言う通りだ
そして私もこの浴衣を着る伊織を見てみたい
絶対に綺麗だ
「買おう!で、全部終わったらプレゼントしよう!」
「やった!」
そうして2人で伊織用の浴衣も買ってお店を出た