第1章 源清磨 / キミの為だけのアロマ ★
「そういえば、お店の前の出待ち、凄かったけど…」
「あぁ…。あはは。大丈夫、店長が何とかしてくれるから」
どうやら、テレビに映ってから、ずっとこうなんだとか…。
流石、清磨。
昔からめちゃくちゃモテてたけど、遂にここまでとは。
「さて、そろそろ始めようかな。はエステの経験はある?」
「…すみません…ございません」
「ふふっ、何で謝ってるの?」
「いやだって…。己の女子力の無さに何だか…恥ずかしくなって来た」
「そう? 僕は嬉しいけど」
「嬉しい??」
何故清磨が嬉しいのか分からなくて首を捻っていると。
だって…と、清磨は続けた。
「幼馴染の僕がエステティシャンやってるのに、が他でエステやってたら、何だか悔しいもの」
そう、真っ直ぐ答える清磨。
「く…悔しいって…そ、そんなもん…??」
「うん。そんなもん」
うっ…。何なんだこの可愛い幼馴染は!!
知ってるけど!!知っていたけども!!
私のこんな気持ちを知らない清磨は、相変わらずニコニコと微笑んでいた。
そして清磨は、いくつかの小瓶を持って私の隣に座る。
とても可愛らしい小瓶には、可愛らしいラベリングがしてあって。
「最初に、この中から好きなアロマを選んで欲しいんだ」
最初はコレね、と。小瓶の蓋を開けて顔の近くまで持って来てくれる。とても甘い香りがふわっと漂って、鼻腔を満たしていく。
いい香り…と無意識に呟くと、清磨はこの香りの名前や効能をゆっくり説明してくれた。
それを、小瓶の数だけ、繰り返す。
「次が最後だよ」
そう言って清磨が手に取った小瓶には、ラベリングがしてなかった。
他の小瓶には、全部可愛いラベリングがしてあるのに…と不思議に思っていたら、漂って来た香りに、反射的に顔を上げた。
「やっぱり、好きだと思ったんだ、これ」
「えっ…!? 何で分かって…!?」
「だって、柑橘系の香り昔から好きでしょ? だからこれは、僕がの為に一から調合してみたんだ」
気に入って貰えたようで、良かった。なんて言って笑うから。
胸がキュン…なんてもんじゃない。
心臓がドキドキと煩く鳴ってしまって、折角説明してくれた効能が、全く頭に入らなかった。