第3章 源清磨 / 映画館へ行こう ★
「勿論ダメじゃないけど、2回も見るなんて珍しいね?」
「ふふ、折角だから…色々と堪能、したくて」
「そっか、清磨くんがそれくらい興味を持ってくれて嬉しいよ♪ じゃあ、一番後ろの席でチケットを取るね」
スイスイと端末を操作して発券していく。
この時はまだ気付かなかった。先程の清磨くんの“色々と堪能”に、色んな含みがあったなんて。
それから間もなく自分の席に着き、貰った特典色紙を確認しあったり、予告を見ながら、あれも面白そうだね、なんてお話したり。
ふと入口の方を見ると、一番後ろの席なので、続々と入って来る人達が目に入った。
もう既に結構な人数が入っていて、これだけの人達が刀剣男士に関心を持ってくれていると思うと、審神者としてとても嬉しく思う。
「…何だか誇らしげな顔してるね主?」
「うん…、…って、もう、二人の時は名前で呼んでって言ってるのに」
「ふふ、そうだったね…、」
「う…うん…///」
呼んでって言ったけど、いざ言われたらちょっと照れる…///
すると、照明が消え、辺りが真っ暗となり、物語が始まった。
非常に見入ってしまう内容だった。
もし、自分の本丸で同じことが起こったらどうしよう、とか。
自分が倒れてしまったら、どうなってしまうだろう、とか。
江戸のシーンでは、あぁ、清磨くんはあの色も似合うなぁ、とか。
この本丸も、清磨くんと水心子くんは仲良いなぁ…とか。
そうやって一人はにかんでいると、ふいに、私の手に手が重ねられた。驚いて清磨くんの方を見ると、彼はにこっと笑って、画面へ視線を戻した。
なんだろう…。ただ、手が重なっただけなのに、凄く、ドキドキしてしまう。
なるべく意識しないように私も画面へ視線を戻すが、清磨くんの手は私の手を軽く握ったり、ススっと指を滑らせたり…
これ、絶対、わざとやってる…!?
もう!!と清磨くんの方を睨み付けるが、清磨くんは全く意に介さない。
それどころか、清磨くんの手は私の手を離れ、太もも辺りに手を滑らせた。
「ひっ!? き、きよま…」
「しー。あんまり声出しちゃダメ、だよ?」
(誰のせいだと思って!!)
本当は叫んでやりたかったけど、他の人の邪魔になるので、心の中に押し込んだ。