第2章 水心子正秀 / 恋刀1年記念の決意 ★
…分かっている。彼女にその気が無い事を。
彼女は純粋に、この露天風呂を楽しみたいのだ。
その証拠に、このヒノキ風呂の縁にはヒヨコのオモチャ?が数体、綺麗に並べられている。
湯に浮かべるのだろうか…。
「…お前はいいな。いつも何も考えずにと風呂に入っているのだろう…?」
ツンツンと、ヒヨコをつついていると。
ガチャリと扉が開く音がした。
「お待たせ水くん、早速入っていいかな?」
「あ…あぁ。良い湯加減だぞ…」
「ほんと!?」
目を輝かせて、まずは手を湯につけて少しかき回す彼女。
バスタオルを巻いただけの姿…、目のやり場に困るな…。
…と言いつつも、見てしまう…。うぅ…。
「わぁ、あったかいね~♪」
ヒノキ風呂の縁に腰掛け、脚を入れていく彼女。
濡れたバスタオルが肌に張り付き、身体のラインを露わにしていく。
が…我慢だぞ水心子正秀。彼女は純粋に露天風呂を楽しんでいるのだ。決戦は夜…夜なのだぞ…!!
そう自分に言い聞かせて、逸る鼓動を必死に抑えようとした。
「ん~~~、良いお湯~♡」
向かい合うように、反対側に腰を落とした彼女。
気持ち良さそうに腕を伸ばしている。
「それで? これは浮かべるのか?」
私が縁に並べられたヒヨコ達を指すと、彼女はうん!と笑った。
そしてヒヨコ達と湯に浮かべ、満足そうに微笑んだ。
可愛いなぁと眺めていると、彼女はヒヨコ一つを手に取り、私の前へ差し出した。
「このヒヨコちゃん達ね、清磨くんがくれたんだよ」
「えっ!? 清磨が!!!??」
清磨にそんな趣味があるなんて知らなかった…!!
と驚いていると。彼女はふふっ、と笑って。
「お留守番する僕の代わりに、この子達を連れてってあげて欲しいな、って言われてね。だから連れて来たんだ♪」
「清磨がそんな事を…」
………。何だろう。何か、嫌な予感がする。
漠然とそんな事を感じていると。
彼女は「あっ」と声を上げた。
「一匹足りない…、ちょっと取ってくるね」
そう言って彼女が勢いよく起ち上がった時だった。
足を滑らせてしまった彼女が体制を崩す。
それを支えようと彼女に手を伸ばした時…
ぽふんっ
彼女の豊満な胸が、谷間が。
私の顔にぶつかった。