第52章 ヒッポグリフ
視線を感じたのか、それともたまたまなのか、ドラコが振り返ってミラたちを見上げた。自分たちの存在に気がついたドラコはニヤリと笑ってみせると、前を向いてまた話し出したのか。クラッブとゴイルが大笑いしだした。
ハグリッドは小屋の外で生徒たちを待っていた。厚手木綿のオーバーを着込み、足元にボアハウンド犬のファングを従え、早くはじめたくてうずうずしている様子で立っているのがわかった。
「さあ、急げ。早く来いや!」
と、生徒が近付くとハグリッドが声を掛けた。
「今日は、皆んなにいいもんがあるぞ!すごい授業だぞ!皆んな来たか?よーし。ついて来いや!」
ミラは一瞬、『森』に入るのかと胸が高鳴った。だがハグリッドは森の中へは向かわず、その縁をぐんぐん歩いていき、五分ほどすると、生徒たちを広々とした放牧場のような場所に連れて行った。そこには何もいなかった。
「皆んな、ここの柵のまわりに集まれ!」
と、ハグリッドが号令を掛けると、生徒たちはわらわら集まり始めた。
「そーだ----ちゃんと見えるようにしろよ。さーて、イッチ番最初にやることは、教科書を開くこった----」
「どうやって?」
と、ドラコの冷たい気取った声がした。
「え?」
「どうやって、教科書を開けばいいんです?」と、ドラコが呆れた顔をしながら繰り返した。そして、ドラコは『怪物的な怪物の本』を取り出して、紐でぐるぐる巻きに縛っているのを見せた。ミラもカバンからハグリッドが送ってくれたままの紙袋を取り出し、他にもハリーのようにベルトで縛っていたり、大きなクリップで挟んでいる生徒ばかりだった。
「だ、誰も教科書をまだ開けてないのか?」
ハグリッドはショックを受け、がっかりした様に見えた。
「お前さんたち、撫でればよかったんだ。見るんだ----」