第52章 ヒッポグリフ
ハグリッドはスペロテープでぐるぐるに巻かれたハーマイオニーの教科書を取り上げると、本がハグリッドに噛み付く前に、ハグリッドの大きな人差し指が本の背表紙をひとなでした。すると、本はブルっと震えてパタンと開いた。
「ユニークな本だね、ハグリッド----」
「ああ、僕たちみんな、そんな馬鹿げたことに気付くはずないよ!」
ミラの発言は、ドラコの発言にかき消されてしまった。
「撫でればよかったのね!そんなこと気付く筈ないわ!」
「お----俺は、こいつらが愉快な奴らだと思ったんだが」
「ああ、恐ろしく愉快ですよ!僕たちの手を噛み切ろうとする本を持たせるなんて、全くユーモアたっぷりだ!」
「黙れ、マルフォイ」
ハグリッドはすっかりうなだれていた。
「開き方がわかってよかったじゃん。それでハグリッド、今日はどんな魔法生物の勉強を?」
「あ、ああ----そうだな。えーと、それじゃ----そんで----えーと、教科書はある、と。ウン。そんじゃ、連れて来る。待っとれよ----」
ミラはなんとかハグリッドに最初の授業で自信をつけてもらいたいと思い、誘導して授業を進めさせた。ハグリッドは大股で『森』へと入っていくと、姿が見えなくなった。
「まったく、この学校はどうなってるんだろうねぇ。あのウドの大木が教えるなんて、父上に申し上げたら、卒倒なさるだろうなぁ----」
「黙れ、マルフォイ」
ハリーが繰り返し言った。ミラもドラコを睨み付け、厳しい口調で話しかけた。
「マルフォイ、ハグリッドはこの学校で一番魔法生物に詳しい。侮ってたら痛い目を見るぞ」
「ふん。まともな教科書も指定できないのにかい?どう教えてくれるか楽しみだ」
二人は静かに睨み合った。
「オオオオオオオオー!」
と、ラベンダーが、放牧場の向こう側を指さして、甲高いををあげた。ミラとドラコも睨むのをやめて、ラベンダーの指差す方を見ると、ミラはこれまで見たこともない奇妙な生き物が十数頭、足早にこっちに向かって来た。ミラは一瞬にして心を奪われた。