第50章 新学期
やっと学校に到着して四人が馬車を降りると、気取った、いかにも嬉しそうな声が聞こえてきた。
「気絶したんだって、ポッター?ロングボトムは本当のことを言ってるのかな?本当に気絶なんかしたのかい?」
「失せろ、マルフォイ」
(ネビルの奴、あとで絞めてやろう)
ドラコは肘でハーマイオニーを押し退けてハリーの前に進み出て立ちはだかった。喜びに目を輝かせ、薄青い目が意地悪く光っていた。それにロンは歯を食いしばって言った。
「ウィーズリー、君も気絶したのか?あのこわーいディメンターで、君も縮み上がったのかい、ウィーズリー?」
「マルフォイ、いい加減にしろ」
ミラはハリーの前に出ると、杖をマルフォイに突き付けた。
「大広間に着く前に、先に医務室に行くことになる」
「今年も早々に罰則を受けるつもりか、グローヴァー。目立ちたがり屋はポッターに似たのか?」
突き付けられた杖に、ドラコは怖がる様子は見えなかった。ミラはドラコが自分に呪いをかけない自信があるのかと疑った。ミラはドラコに一歩近付いた。
「コンパートメントでのこと、ここで言いふらしてもいいんだけど?」
と、声を潜めて言った。
「----お前も、鼻血だけじゃないことはポッターたちには言ったのか?」
「!」
驚いたミラの顔を見たドラコは、確信を得た顔をしていた。二人が静かに睨み合っていると、「どうしたんだい?」と、穏やかな声がした。ルーピン先生が次の馬車から降りてきたのだ。ミラはサッと杖をローブの中に閉まった。ドラコは不遜な目つきでルーピン先生をジロジロ見た。継ぎのあるローブや、ぼろぼろのカバンを眺め回した。
「いいえ、何も----えーと----先生」
そう言ったドラコの声は、わずかに皮肉が込められていた。フフン、と気取った態度でクラッブとゴイルに振り向き、二人を引き連れて城の石段を上がっていった。